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米原万里『不実な美女か貞淑な醜女か』

米原万里「不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か」

一昨年亡くなったロシア語同時通訳の第一人者

「醜女」にブスとルビをふっている

ATOKでBUSUと打っても醜女には変換されない(SHUUJOもしくはSIKOMEと打つと変換される)

何故彼女がわざわざブスとルビをふっているかは,冒頭にも出てくる差別語に対する姿勢から察せられる

ただし、本題には説明がある

「さて、原文に忠実かどうか、原発言を正確に伝えているかどうかという座標軸を、貞淑度をはかるものとし、原文を誤って伝えている、あるいは原文を裏切っているというような場合には不実というふうに考える。そして訳文の良さ、訳文がどれだけ整っているか、響きがいいかということを、女性の容貌にたとえて、整っている場合は、美女、いかにも翻訳的なぎこちない訳文である場合には醜女というふうに分類する・・・」

「貞淑な美女」が良いがいつもそうとはいかず、世の中の通訳者は圧倒的多数において、「不実な美女」か、「貞淑な醜女」をしているのだ、と。

同時通訳のなんたるかを全く知らない我々にとって、驚きの連続のような様々なエピソードを満載してある。

実に楽しい。

そして小気味よいくらいに下ネタの連発である。(趣味だったそうだ)

一部をご紹介

小咄「退職願い」

体の各臓器が会議を開き、退職願を募ることになった

真っ先に心臓

『私はこのろくでもない男のためにポンプ運動をやってるが、もうへとへと。そろそろ引退させて頂戴』

他の臓器は心臓の引き止める。

『君に退かれたら我々は皆一蓮托生ではないか。』

そして肺や、胃、腸などが同様の希望を出すが、その時片隅の方から小さな声が聞こえる。

「あのー、僕も引退したいんですが・・・」

一同はその声の方に向かって「チョット君、良く聞こえないぞ、だいたい発言する時ぐらいは、立っていいたまえ」

するとその声が答えるに

「立てるほどならこんなことは申しません」・・・

さらに後日談的な話が続く

この小咄はいつも受けるので、あるパーティでも話したところ、会場はシーンとしてしまった。聴衆を見渡すと、70才以上の老人ばかりだった・・・

こんなのは序の口でほぼ全文がユニークな逸話で溢れている。

ただしクドイ。何度も何度も通訳の特性についてアレコレ、翻訳との違いについてドレソレ・・・

この諄さは代々木だからではあるまいに

いままでどうしても米原万里の本を買う気になれなかったのは、

代々木だから(父親は米原昶)

これ、理由としては充分でしょ

生前、文春で書評コラムを持ち回りで書いていたのを楽しみにして読んでいた。鹿島茂なんかより面白かった・・・けど

月並みだけど機知とユーモアに富んだ才気溢れる女が、53歳という若さで身罷るのは残念ですね

Wikipediaによると東外大ロシア語学科に入学して、日本共産党入党。

東大大学院在学中の1985年「東大大学院支部伊里一智事件」に連座して党から除籍処分を受けたが、後に復党している、とある。

「赤旗」は彼女の死去に際して、党員歴を載せなかったそうだ。旧代々木出身系のブログ では「離党」したのでは・・・とあった

代々木は無意味に冷たいから「離党」だったかな

(そうであってほしいか)

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