大沢在昌「新宿鮫Ⅴ・炎蛹」
大沢在昌「新宿鮫Ⅴ・炎蛹」
ほのおさなぎと読む
大沢の想像上の害虫だそうだ
驚異的な繁殖力で稲を食い荒らし、数年で日本の稲作は壊滅的な打撃を被るという「フラメウス・プーパ」の蛹が、コロンビアの出稼ぎ娼婦と共に新宿へやって来た。
最初は、虫の話ばかりで気持ち悪いので、読むの止めようと思った
しかも、「話が錯綜しているから、アンタには無理」と言われてもいたので・・・
しかし、同時平行に読んでいる本とのタイミングから?ほぼ一気に読んでしまった
何故なら、面白いから・・・
脇役の農水省横浜植物防疫所の防疫官・甲屋(かぶとや)のキャラが、役人のクセして情熱的、仕事に誇りを持っているという、ありきたりな、多少ステレオタイプな感じが気になるが、良い
「後記」で実際の横浜と成田の防疫官にお世話になりましたと5名の実名を上げているが、ホントに世話になったのだろう。
植物防疫は国防の最前線って、オレが言うのもおかしいか・・・
甲屋がおかまのたまきに好かれ意気投合するのだが、その場面がほとんど無いのが、チョイ残念
「放火」に対して、消防と警察とは解釈が大きく違うというのも興味深い
『消防では、発生した火災において放火以外の出火の可能性を考えられないものをすべて“放火”とみなします。一方、警察では、単に火災の発生を意図して火を放ったと言うだけでなく、その行為によって公共の危険を惹起した、という条件を必要とします。つまり、消防が“放火”と考えてる火災であっても、警察には公共の危険を感じられなければ、ちがうのです。“放火”と“放火犯罪”のちがい、とでも言えばいいのでしょうか。従って警察と消防の統計を比べてみると、「放火火災」の発生件数と「放火犯罪」の発生件数では5倍近い開きがあります。(中略)しかも、「放火犯罪」の件数が、この数年横這いであるのに比べ、「放火火災」の件数はどんどん増えています。』
コレは、桃井と並んで数少ない鮫島の良き理解者で優秀な鑑識の藪の大学時代の仲間・消防庁調査課吾妻の弁。(今回は良い脇役が揃いすぎだね。)
つまり、「放火が放火犯罪となるためには、被害者が必要なのである」
「消防は火災予防のための査察、立ち入り検査を行う。しかし警察は、犯罪予防のための捜査は行わない。それを行えば、市民生活への干渉となり、進んでいけば、秘密警察のような存在が跋扈する警察国家の出現を招きかねないからだ。」
これ大沢の弁である。
片方では、イジメやストーカー行為に対し被害を訴えても何もしない警察に対しての社会的批判があるが、その際の警察の反論と同じ論拠ではないだろうか。
何度も出てくるが、鮫島の警察官としての本文は「市民の安全を守る」である。
「市民」って誰?どんな階級的利害を持っているんだ?
「安全」とは何から安全なんだ?
「守る」に予防は入らないのか?
そうそう、保安処分はどうなったんだ?やりたいんだろ?色々形を変えてやってるじゃん
鮫島の活力が、そんな曖昧模糊として、あたかも万人受けするようなお題目にあるのでは薄ら寒い。
大沢・鮫島はこうも言う
「自分(警察)のみに正義が存在するとも考えてはいけない。警察官がすべての活動を正義に名の下におこない始めれば、暗黒の時代が訪れるだろう。 必要なのは考えそして判断することだった。警察官としての自分が、何をおこない得て、何をしなければならないのか。市民の安全を守るという、この確固たるものに見えて実は曖昧な目標に一歩でも近づくためには、どうすればいいのかを。」
これって浅沼稲次郎の「少しでも良い社会にしたい」というのと似てませんかね?
そう思うのは結構だが、アジテーションになったら地平が違ってくるはずだ
「市民の安全を守る」というのは警察ではない・・・警察には出来ないというのを身に浸みている鮫島さん
警察に対する絶望的な批判が必要です。
今回のように、役人の枠を越えた魅力ある脇役を多く登場させたのも、官僚機構・小役人根性の中では何もまっとうな仕事は出来ないという、国家組織への批判の気持ちもあるんでしょ?
コンプライアンス万全の新宿鮫は「安心」でもあるが、勝てないと思うよ
ところで、話は違うけど、最近新宿鮫を意識して銀座鰐が出現したんだって・・・?
ウーん? (?_?)
鰐は飼えないし、食べても美味くないんじゃないの?
疑問符の多い今回であったな
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