久世光彦「飲食男女」
久世光彦「飲食男女」
「おんじきなんにょ」と読んでもらいたいらしい
副題に「おいしい女たち」とある
車谷長吉の直後だっただけに、何とも優しい
いや、お優しい限りだ
少々長くの引用だが、のっけにこんなのが出てくる
「エピローグ・二つの唇」の題
久世は先頃逝ったけど、爺さんだからか、下半身の話がカナリ古めかしく、且つ懐かしい
つまり下の唇が物言う話
「女の人が膝を立てた。その拍子に、こんどははっきり聞こえた。『ハジ・・・・・』。確かにそう言った『恥』のことだろうか。ぼくは恐る恐る畳を這って、物言う下半身に近寄った」(中略)「それは窓から差し込む西日に染まって、それはきれいな桃色だった。ぼくは何だか感傷的な気持ちになって、声にならない声で『もしもし』と囁いてみた。唇は少しモジモジしてから『ブルジョアジー・・・・・・』と答えた。どうしても学生デモに参加出来ないぼくの怯懦を、この唇は顔を歪めて非難しているのだ。・・・・・・ぼくは唇に向かってうなだれた。」
自らの遍歴を開示した本は多い
もちろん味付け・演出は当然の事、ホントにあったの?と思える話もあろう
後年、振り返れば、「逃した魚は大きい」のは当たり前で、仮に捨てられていても捨てたと同然位に話は昇華する
「飲食男女」の話の数々は、どれもうらやましい、もったいない(苦笑)・・・というよりも、人生の半分以上をやり過ごしてしまったにもかかわらず、まだ意欲がありそうなトンチキには、「オレの方がもうちょっといい話が出来そう」なんて思わせる
そして、むしろ「性」ではなく「生」(なまじゃないよ、いきるだよ)に興味が湧きまする
| 固定リンク
「読書」カテゴリの記事
- 東直巳「ライト・グッドバイ」(2008.11.23)
- 吉行淳之介「私の東京物語」(2008.11.12)
- 山本一力「蒼龍」(2008.11.11)
- 倉橋由美子「老人のための残酷童話」(2008.11.05)
- 芥川龍之介「地獄変・偸盗」(2008.11.01)


コメント