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久世光彦「飲食男女」

久世光彦「飲食男女」

おんじきなんにょ」と読んでもらいたいらしい

副題に「おいしい女たち」とある

車谷長吉の直後だっただけに、何とも優しい

いや、お優しい限りだ

少々長くの引用だが、のっけにこんなのが出てくる

「エピローグ・二つの唇」の題

久世は先頃逝ったけど、爺さんだからか、下半身の話がカナリ古めかしく、且つ懐かしい

つまり下の唇が物言う話

「女の人が膝を立てた。その拍子に、こんどははっきり聞こえた。『ハジ・・・・・』。確かにそう言った『恥』のことだろうか。ぼくは恐る恐る畳を這って、物言う下半身に近寄った」(中略)「それは窓から差し込む西日に染まって、それはきれいな桃色だった。ぼくは何だか感傷的な気持ちになって、声にならない声で『もしもし』と囁いてみた。唇は少しモジモジしてから『ブルジョアジー・・・・・・』と答えた。どうしても学生デモに参加出来ないぼくの怯懦を、この唇は顔を歪めて非難しているのだ。・・・・・・ぼくは唇に向かってうなだれた。」

自らの遍歴を開示した本は多い

もちろん味付け・演出は当然の事、ホントにあったの?と思える話もあろう

後年、振り返れば、「逃した魚は大きい」のは当たり前で、仮に捨てられていても捨てたと同然位に話は昇華する

「飲食男女」の話の数々は、どれもうらやましい、もったいない(苦笑)・・・というよりも、人生の半分以上をやり過ごしてしまったにもかかわらず、まだ意欲がありそうなトンチキには、「オレの方がもうちょっといい話が出来そう」なんて思わせる

そして、むしろ「性」ではなく「生」(なまじゃないよ、いきるだよ)に興味が湧きまする

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